木曽町総合トレーニングセンターの竣工と隣接する相撲場の改修 2024年6月に当社で設計監理を行った木曽町総合トレーニングセンターが竣工しました。 竣工式と同日行われた土俵開きには大相撲・御嶽海関が出席され、華々しいスタートを切りました。 この施設には屋内相撲練習場が設けられており、土俵が2面設置されています。この土俵には、高品質で知られる「荒木田土」が使用されています。 また、本記事執筆中の2024年8月には、トレーニングセンターに隣接する木曽町町民相撲場 (こちらの設計も当社が実施しました) の本土俵の改修工事も始まりました。現在の施設は46年前の長野国体でも使用されたものですが、老朽化が進んでいるため、今回改修工事が行われています。 この相撲場は2028年開催予定の 国民スポーツ大会、全国障害者スポーツ大会 の会場として使用される予定で、吊り屋根を備えた本格的な盛土表が特徴です。 荒木田土の特徴と利用用途 荒木田土は、その名前の由来となった東京都荒川区の荒木田原で採取された土が良質であったことから、広く知られるようになりました。この土は、粘土と砂が絶妙なバランスで混ざり合っており、強い粘り気と丸みを帯びた形状が特徴です。そのため、相撲の土俵だけでなく、野球場のピッチャーマウンドや園芸、焼き物用の土としても利用されています。現在では、荒木田原での採取が困難になったため、川越周辺で採取が行われています。 品質管理と「土ソムリエ」の役割 荒木田土の品質を維持するため、採取された土は「土ソムリエ」と呼ばれる職人たちが1年間ほどかけて異物を取り除き、均一に調整します。こうして管理された土は、全国に出荷され、様々な用途で使用されます。例えば、大相撲土俵の施工を手がける川越市の初野建材工業も、この荒木田土を使用しています。 一流アスリートからも認められる品質 荒木田土の品質の高さは、多くの一流アスリートたちからも認められています。現役時代の横綱白鵬は、土俵に上がった際に「土が足に馴染みすごくいい」と感想を述べ、また、野球の松坂投手もマウンドで「スパイクに食いついて締まっている感じがしてすごくいい」と評価しました。さらに、大相撲ではかつて場所ごとに異なる地域の良質な土で土俵が作られていましたが、2017年からは開催される全ての会場で荒木田土が使用さ
土用の丑の日と鰻にまつわる話
土用の丑の日とは 土用とは、古代中国の五行思想に由来する四季の概念で、立春・立夏・立秋・立冬のそれぞれの直前18日間のことを指します。また、丑の日は干支の十二支からきていて、十二日で一回りすることになっています。ですから、18日間の土用の期間に丑の日は1~2回発生します。例えば、2025年夏のの土用の丑の日は7月24日と8月5日の二日ありました。 夏の土用の丑の日 土用の丑の日は各季節に必ずありますが、季節の変わり目は体調に気を付ける時期であることより特別な日として考えられていました。日本では、特に夏の土用の丑の日は梅雨明けと重なり体力が落ちやすいことから重要な日と考えられ、精が付くものを食べる習慣が出来ました。 なぜ夏の土用の丑の日に鰻を食べるようになったのか 夏の土用の丑の日に鰻を食べる習慣が始まった理由は、江戸時代の有名な蘭学者である平賀源内(ひらが げんない)にまつわるエピソードが起源とされています。 エピソードの詳細 江戸時代中期、ある鰻屋が夏場になると鰻が売れなくて困っていました。夏の暑い時期には食欲が減退し、脂ののった鰻は敬遠されがちだったためです。困った鰻屋の主人は、平賀源内に相談しました。 源内は、「丑の日に『う』のつく食べ物を食べると夏負けしない」という古くからの俗信に基づいて、「本日、土用の丑の日」と書かれた看板を店に掲げることを提案しました。これが功を奏し、その日から鰻が飛ぶように売れたと言われています。 このエピソードが広まり、土用の丑の日には鰻を食べるという習慣が定着したとされています。この風習は現代に至るまで続いており、今でも多くの日本人が夏の土用の丑の日に鰻を食べています。 文化的背景 この風習には、夏の暑い時期に滋養のある鰻を食べることで、暑さによる疲れを癒し、スタミナを補うという日本古来からの季節感や健康を意識する習慣が反映されています。 鰻の値段の高騰とその原因 天然鰻の減少から、養殖鰻の需要が益々増えていますが、稚魚不足の影響で価格が高騰しています。 鰻の養殖法は独特 現在の鰻の養殖は卵から育てるのではなく、シラスウナギと呼ばれる天然の稚魚を河口等で捕って育てています。そのため、稚魚が捕れなければウナギを養殖することができません。(完全養殖の研究も進んでは
土蔵造りの魅力と構造の変遷
土蔵造りに憧れる 本ブログ記事の筆者は土蔵造りの形状が好きです。弊社所在地の松本では、中町通りに昔ながらの街並みが残っており、連なる真っ白な壁の「土蔵造り」のお店が独特の街並みを形成していると言えます。 土蔵造りの特徴 土蔵造りとは、木の柱、梁の軸組みに木舞の下地 (丸竹とシュロ縄を用いる) を組み、土壁を幾度となく塗り重ね 仕上げに漆喰を塗った建物で、耐火性に優れているのが特徴です。漆喰は耐水性にも優れているので、風雨に対しても建物を守ってくれます。 漆喰の種類と変遷 本来の漆喰の主原料となる消石灰は、サンゴなどの化石を塩で焼いて作ります。現代の漆喰には化学物質が含まれており、ひび割れしにくく、乾きやすいものも出ています。 土蔵の断熱性 土蔵はその厚い土壁によって優れた断熱性能を持っています。夏は涼しく、冬は暖かく保つことができ、現代のエコ建築にも通じる特徴を持っています。土蔵の断熱性は、建物の内部環境を快適に保つために重要な役割を果たしています。 江戸時代の土蔵造りの盛行 蔵造りがいつ頃から始まったか起源ははっきりしていませんが、江戸時代には漆喰仕上げが完成したといわれています。江戸時代には店舗兼住宅として建てられた「見せ蔵」も登場するようになりました。 現代の土蔵造り 屋根の形状の変遷 置き屋根工法とは、一般の家の屋根裏が夏場暑いのに対し、土蔵は天井と屋根の間に隙間を設けることで通風性を高める工法です。 土蔵造りの構造と形状は地域や時代に応じて変遷を遂げてきました。耐火性と調湿性を活かしながら、機能性の向上が図られてきました。 土蔵の再評価 近年では、土蔵の伝統的な建築技術が再評価され、新築やリノベーションに取り入れられるケースが増えています。古い土蔵を現代風にアレンジしたカフェやショップが各地で人気を博しており、伝統と現代の融合が注目されています。 土蔵造りはどこで見られるか 最後に土蔵造りの具体的な例をご紹介します。 先に挙げた長野県松本市の中町通りの他には以下のような例が見られます。 松本市 小口わさび店 以下の写真の小口わさび店は松本市にある土蔵造りで、弊社 伊藤建築設計事務所の作品です。 *クリックするとプロジェクト詳細ページへ飛びます また、以下の場所は土蔵の立ち並ぶ景観で有名です。 岡