近年、建設業界ではドローン(無人航空機)の導入が進み、それが安全性の向上や業務効率化に大きく貢献してくれています。本ブログ記事では、設計事務所におけるドローンの活用事例やメリット、運用時の注意点について、法制度の変化も踏まえて整理します。
目次
ドローンの導入がもたらす業務効率化と安全性
現場調査・測量における活用
設計事務所でのドローン活用例として、3次元測量、敷地全体の写真・動画撮影、上空からの現地調査が挙げられます。これまで人が立ち入るのが難しかった高所や危険箇所においても、ドローンでの撮影が可能になり、作業の安全性が大きく向上します。また、移動・準備・調査の時間を削減できることも大きな利点です。
外壁調査でのドローンの有効性
赤外線カメラによる調査の制度化
2022年の建築基準法の改正により、ドローンに搭載した赤外線カメラを用いた外壁調査が正式な調査手法として認められました。タイルやモルタルの浮きなどを温度差で検出するこの手法は、足場を組む必要がなく、診断の期間短縮や騒音の抑制、コスト削減に繋がる点で注目されています。
外注と内製化の適切なバランス
ドローンを用いた全ての業務を自社で賄うのは現実的ではありません。簡易な写真撮影や初期調査は自社で行い、精度が求められる赤外線解析や3Dモデリングは専門業者に委託するなど、業務内容に応じて使い分けるのが現実的です。
飛行ルールと許可制度の基本
規制対象となる空域と飛行方法
ドローンは誰でも簡単に飛ばせるように見えますが、100g以上の機体を用いる場合、以下のような飛行が規制対象となります。通常、業務に必要なスペックを備えた産業用ドローンは100gを超えていますので、ほとんどの場合は以下を遵守する必要があります。
- 人口集中地区(DID)での飛行
- 地表から150m以上の高度での飛行
- 夜間飛行
- 人または物件から30m未満での飛行
これらの飛行を行うには、国土交通省への許可・承認申請が必要です。違反した場合は罰則もありますので、事前の確認は必須です。
国家資格制度への移行と今後の対応
現在は民間資格を用いて申請することも可能ですが、2025年12月をもってその制度が廃止される予定です。今後は「無人航空機操縦士(一等・二等)」といった国家資格の取得が推奨され、業務上の自由度や信頼性が向上する点でもメリットが大きいといえます。
導入に向けた実務上のポイント
法規・機体・訓練の三要素
ドローン導入には、飛行ルールだけでなく、以下のような実務的配慮が必要です。
- 航空法・自治体条例の理解と遵守
- 業務目的に応じた適切な機体の選定
- 操縦者の技術研修や安全教育の実施
- 第三者や近隣住民への十分な配慮
設計業務とドローンの未来
技術と専門性の融合が鍵
ドローンというテクノロジーを、設計事務所の持つ空間認識力や構造理解と組み合わせることで、より高精度な設計や点検、報告書作成が可能になります。業務の質向上だけでなく、他社との差別化にもつながる重要な取り組みです。
今後に向けた展望
建設分野における技術革新は今後も続きます。ドローンに限らず、BIM、AI、ロボティクスといった新技術との連携も視野に入れながら、変化を柔軟に取り入れていく姿勢が重要です。これからも業界全体の動向を注視し、設計事務所としての可能性を広げていきたいと考えています。