最近ご縁あって、名古屋造形大学にお邪魔する機会がありました。
その際に名城公園キャンパス内を見学してきましたので、今回はその建築的な側面をまとめていきます。
目次
名古屋造形大学 新キャンパスの概要
新キャンパスは2022年に竣工しました。
建築面積:10,465.21㎡
延床面積:20,881.34㎡
階数:地下1階、地上4階
最高高さ:24.9m
設計は山本理顕氏設計工場が手がけました。
建築家・山本理顕氏のプロフィール
1945年北京生まれ。幼少期に横浜へ移住。
日本大学を卒業後、東京芸術大学大学院を修了。1973年に「山本理顕設計工場」を設立しました。
2024年には建築界最高の栄誉とされるプリツカー賞を受賞(日本人9人目)しています。
代表作には「公立はこだて未来大学」「横須賀美術館」などがあります。
名古屋造形大学の設計思想と特徴
公共と私的空間の境界を曖昧にする
名古屋造形大学では、大学空間を地域社会に開き、学生・教職員・市民が交差することで新たな価値を生み出す構成が実現されています。
建物は単なる教育施設にとどまらず、交流と創造を促す拠点として位置づけられています。
日常の尊厳を支える装置としての建築
教室、廊下、ラウンジ、展示空間などは、機能性だけでなく「居心地の良さ」「誇り」「交流の場」として設計されています。
本ブログの筆者も見学時に、壁の少ない一体的な空間構成から、学生同士や地域住民との自然な交流が促されていることを強く感じました。
建築的な特徴
駅上のブリッジ構造
新キャンパスは地下鉄「名城公園駅」の真上に建てられています。
建物全体が橋のような構造を持ち、東西をつなぐ動線を形成。
都市と大学をつなぐだけでなく、学内の各エリアを有機的に結ぶ役割を担っています。
共創スタジオ ― 巨大な学びの空間
4階には「共創スタジオ」と呼ばれる104m四方の大空間が設けられています。
550角の鉄骨鉄筋コンクリートの柱が並び、格子壁のPC板が空間を支えています。天井高は約7mと開放感にあふれ、多様な創作活動を分野横断的に支える空間です。


このスタジオでは学科を超えて使用することで、多様な価値観が交流し、新たな表現や学びが生まれる場となっています。
デザインとサイン計画
キャンパス内部は、大きな壁を極力排除し、展示スペースや教室が自然につながる構成です。
サイン計画にも特徴があり、文字だけに頼らず、大胆な図形や記号を用いたグラフィック表示で直感的に理解できる工夫がなされています。
1階のカフェは地域にも開放されており、学生と市民が共に利用できる空間となっています。
まとめ
名古屋造形大学の新キャンパスは、単なる大学建築を超えて、都市と大学、学生と市民、学科と学科をつなぐ架け橋として存在しています。
公共と私的の境界を曖昧にし、交流を生み出す設計思想は、これからの教育施設や都市空間のあり方を示す先駆的な事例といえるでしょう。
本ブログの筆者としても、訪れた際に感じた「開放性」と「交流の可能性」に強く感銘を受けました。