今日は2023年2月6日に発生した

トルコ・シリア地震と建築物への影響

についてです。

トルコ・シリア地震の実体

日本時間午前10時過ぎに発生したトルコ・シリア地震の規模は、マグニチュード7.8。
そのエネルギーは、2016年の熊本地震の16倍、 阪神・淡路大震災を引き起こした地震の22 倍にのぼり、「世界最大規模の内陸地震」 と言われています。 

地表の断層のずれ幅も大きく、 国土地理院が、 宇宙航空研究開発機構(JAXA ジャクサ)の地球観測衛星「だいち2 号」の観測データをもとに分析したところ、 地震による地殻変動はおよそ400キロに及び、阪神大震災の約4倍にあたり、2016年の熊本地震の10倍近く、最大約4メートルの横ずれが生じています。

米地質調査所によると、 最初の地震の規模はマグニチュード7.8、その約9時間後に7.5の余震が起きました。
日本の気象庁の震度に換算すると、 一部で最大の震度7相当の強い揺れが起きていたといいます。 

2023年2月23日現在、 トルコ・シリア両国の死者数は計50,000人以上になりました。 世界保健機関(WHO) による推計では最大2,300万人が被災したと見られています。
被災地で避難生活を送る人は100万人以上とみられ、テント30万張りが設置されたほか、仮設住宅 10万戸も設けられるといいます。

 

建物の倒壊状況とトルコの耐震基準

この地震では、多くの建物が倒壊しました。
その中には、耐震性能をうたう比較的新しいものも含まれていました。 真新しいマンションが崩れた様子に、トルコ国内では怒りの声が上がっています。
全壊した建物の中には、新築の集合住宅も含まれているため、建物の建築基準について喫緊の深刻な懸念が上がっています。

そもそも、今のトルコの建築工法なら、今回のような揺れの強さに建物は耐えられるはずでした。
そして、過去の震災の経験から、トルコでは地震に備えた耐震基準が徹底されているはずでした。
(1999年に北西部イズミットで起きた地震では、1万7000人が死亡しています。 )

トルコでは2018年に発生した災害や、これまでの被災経験から、より厳しい安全基準が導入され、建築規制が強化されてきました。東京大学地震研究所の楠教授によれば[※1]、最新のトルコの耐震基準は日本と変わらない水準だということです。 

お金を払えば安全基準が免除される?!トルコの「行政処分免除」について [※2]

実はトルコでは、安全基準を満たさない違法建築に対し、政府が「行政処分免除」を繰り返し提供してきました。
安全基準を満たさなくても、一定の金額を払えば、 法的に見逃されるという仕組みです。
これは1960年代から続き、最近では2018年にこうした「処分免除」が実施されました。
最新の規則では、地震多発地域の構造物は、鉄筋で補強された高品質のコンクリートを使用する必要があります。
環境都市化省が2018年に、トルコの建物の50%以上(ほぼ1,300万棟に相当) が規制に違反して建設されたと述べています。 

パンケーキクラッシュ」が起きた建物の多くが柱と柱の間にはりがない「プラットスラブ構造」だったと指摘しています。 

 

違法建築や違法改築の取り締まりに向けて

トルコのメディアは、建物の改築時に柱を取り除くなど違法行為が横行しているものの、当局の監視や取締まりが十分ではなかったなどと伝えています。
被害の拡大の背景に耐震基準を満たしていない違法な建築や改築の横行が指摘されていて、現地では、弁護士たちが責任を問うための証拠を集めようと壊れた建物を写真などで記録する活動を進めています。 

このため、トルコの弁護士会の全国組織は被災地でがれきの撤去が進み、
現場から証拠がなくなる前に記録に残す活動を始めていて、 

甚大な被害を受けたハタイ県の中心都市アンタキヤでは2月22日時点でも各地からボランティアで駆けつけた弁護士たちが建物の倒壊現場を回っていたということです。 

そして、建設資材として使われていた鉄筋の太さや壊れ方などを写真や映像に収めて、位置情報とともにデータを集約していました。 

弁護士会では市民にも活動への参加を呼びかけ、これまでにおよそ5万人から協力を得られたとしていて、集めた証拠を今後の訴訟に役立てたいとしています。 

トルコ弁護士会連合のシベル・スイチメズ副会長は、

「もし建物が適切な土地に適切な方法で建てられていたらこんなに人が死ぬことはありませんでした。
誰に責任があるか明らかにすることは私たちの務めです。
子どもたちのために、将来、誰も犠牲にならないように行動すべきなのです」

と話しています。

トルコの司法当局は、これまでに180人以上を逮捕したことを明らかにしました。


日本の今後について

今回の大地震の被害については、日本も決してひと事ではないといえるでしょう。
1981年より前の古い耐震基準で建てられた建物が、今も多くあり、
今回のような揺れが起きると大きな被害が出るおそれがあるためです。
国土交通省の調べでは、2018年時点でその数は住宅だけで700万戸に上ります。 




今回の記事はここまでです。

トルコ・シリア地震の教訓を胸に、私たちの仕事は人の命と財産を守る仕事だということを忘れず仕事に励んでいきたいと思います。 


【参考】
NHK NEWS WEB
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230223/k10013988611000.html

【出典】 
[※1] 東京大学地震研究所の楠教授によりますと
https://japanese.joins.com/JArticle/300888?sectcode=A00&servcode=A00 

[※2]  安全基準を満たさない違法建築に対し、政府が「行政処分免除」を繰り返し提供してきた
https://news.yahoo.co.jp/articles/0c5cc8b9123629c57ad7f41a2fcced54facfd667