今回は、建築現場でコンクリートにストレスをかける工法として使用される 「アンボンドPC工法」 についてご紹介します。 これはアンボンド工法とPC工法を組み合わせたもので、建築物の床スラブ部分などに使われます。 【用語の説明】 アンボンド工法とは、建築材料を互いに接着させず、重ね合わせることで構造体を作る工法のことを指します。 一方PC工法は、PC鋼材を緊張し、圧縮力を加えたコンクリートを用いた工法のことを指します。 ※PCはプレストレスト(Prestressed)コンクリート(Concrete)の略称 (日本語で解釈すれば「緊張材によりあらかじめ圧縮応力をあたえられたコンクリート」という意味になります。 ) 橋梁や高速道路をはじめとした高い安全性が求められる公共構造物で使われています。 実際の建築の現場では、これらの異なる工法が組み合わせて使われることがあり、 組み合わせることにより建築物全体の性能を向上させることができます。 【コンクリートの特性とRC (鉄筋コンクリー ト)】 今回ご紹介する工法で用いられている素材のコンクリートには、 「圧縮する力には強いが、引っ張る力には弱い」という特性があります。 上記の弱点を、鉄筋で補った構造が、 RC造 (鉄筋コンクリー ト造)です。 ※RCはReinforced Concreteの略です 鉄筋を入れて補強するので、大きな引っ張る力が加わっても壊れることはありません。 しかしRC鉄筋コンクリー トにも弱点があります。 それは、下の引っ張り部分に関して多少のひび割れは避けられないという点です。 【RC鉄筋コンクリー トの弱点を補うPC工法】 そこで考えられたのが、PC工法です。 ※PCはPrestressed Concreteの略です 内部に入れた緊張材によって、あらかじめ圧縮力をコンクリートに加えることにより、 ひび割れを少なくすることが可能になりました。 【アンボンド・PC工法 施工の様子】 施工は鉄筋の配筋前に行います。 コンクリートが硬化した後に、端部のPC鋼線を専用ジャッキにより緊張します。 引っ張ることによりコンクリート内に反力として圧縮力が働きます。 上の写真にも写っている緊張材(鋼より線)については、 例えば最近の一般的なマンションでは、 緊張材には、PC鋼材を7
凡事徹底について思うこと
今回は 「凡事徹底」について思うこと を書いていきます。 「当たり前のことを当たり前にやる」「毎日のことを当たり前にやる」ということが案外難しいということは、私も長い社会人生活の中で感じていることです。 上記に関係する言葉として、「凡事徹底」という言葉があります。 これは、 「何でもないような当たり前のことを徹底的に行うこと、または当たり前のことを他の追随を許さないほど極める」 という意味です。 自分自身の戒めのためにも書いていますが、能力の高い人、パフォーマンスの高い人というのは総じて凡事徹底がなされているのだそうです。 また、企業として高い品質、高いサービスを提供してる会社ほど、トップから下の方まで凡事徹底がされているということがある本にも書いてありました。 身の回りの整理整頓、挨拶といった基本的な行動はもちろんですが、凡事という言葉の中には、 お客様との約束の期限を守る、つまり時間を守ること やると言ったことをきちんとやる というようなことも含まれているような気がします。 これが徹底されていないと結局お客様に迷惑がかかってしまう、つまり会社の評価も下がってしまうように思います。 【イチロー選手のエピソード】 元野球選手のイチロー選手が、記者からのインタビューで 「バッティングや守備をあそこまでのレベルに極めるために、何かやってきたことはありますか」 と聞かれた際に、 「いや 何も特別なことはやってませんが、高校3年間365日、毎日普通の練習以外に夜の10分間の素振りをやってきました」と答えられたそうです。 365日が3年間、つまり1000日以上 毎日やったということだそうです。 もちろん、元々のセンス、経済的に悪い状況でなかったことなども成功の理由だと思っていますが、凡事徹底が大きな結果に結びついた一例ではないかと思います。 【松下幸之助さんのエピソード】 また、松下電工(現 パナソニック)の創業者の松下幸之助さんに関するこんなエピソードも聞いたことがあります。 松下さんは、お施主さん、協力業者を含め、これから取引の発生しそうな企業については、ご自分で足を運びその会社を見に行ったそうです。 その際「凡事徹底 できてるかどうか」を訪問先で見て、その会社とお付き合いするかどうかを判断してきたそうです。 それが故後でトラブルになってせ
学生時代の卒業課題のお話
今回は、今から38年前、私が学生だった時に 卒業課題で計画した建物「ホテル有栖川」 をご紹介します。 建設予定地を東京有栖川宮記念公園に設定し、毎日忙しい人が自分時間をゆっくり過ごせるホテルを計画しました。 以下はロッドリングとスクリーントーンで苦戦しながら製図をした卒業課題の図面です。 【建設予定地】 東京麻布にある広大な公園、有栖川宮記念公園の一画、緑の林に囲まれ、朝には鳥のさえずりを聞きながら目覚めることが出来る所です。 【外観と階の構成】 アプローチを進むと見えてくる外観はRC造4階建のL型外観、仕上げは50角のタイル貼。 1階玄関へ入るとこじんまりしたフロントがお客様を迎えます。あくまでも個人空間的な広さを意識したインテリアをイメージしました。 階の構成は1階がパーティールームとレストラン、2階から4階がシングルルーム、ダブルルーム、スイートルームです。 【コンセプト:くつろぎ】 部屋のコンセプトは「くつろぎ」です。忙しい人達が、自分時間を作りリラックスしながら、心身ともにリセット出来る部屋を考えて計画しました。 特長は部屋の中にあるお風呂で、寝湯スタイルの浴槽になっています。 寝ながら浅い湯につかるので関節や筋肉への負担も軽く、血液がより末梢の血管まで無理なく行き渡ることができます。 ストレス解消、疲労回復に最適の入浴法です。 当時はそこまで分かっていませんでしたが、かけ流しの温泉で横になって見ればその効果は誰でも感じる事ができます。 【おわりに】 当時はどうしたら寛ぎの時間を過ごせる空間が出来るのか、随分考えた事を思い出します。 あれから38年間、建築の設計に携わってきましたが、「いい建物とは何なのか」は未だに答えが出ないままだし、考えている時の感覚は当時のままのような気がします。 あと何年この仕事を続けることが出来るか分かりませんが、最後まで新鮮な志は貫きたいものです。