昨年2024年11に、「建築工事積算セミナー」に参加しました。今回 の記事では、セミナーで学んだこと主に令和6年(2024年)の公共建築工事積算基準、工事歩掛要覧の改訂内容をまとめていきます。

セミナーの内容

概要

今回のセミナーは、以下の内容を中心に進行されました。

  1. 令和6年度(2024年)の公共建築工事積算基準の改訂内容
    (「公共建築工事標準単価積算基準」の改訂についても)
  2. 令和6年度(2024年)版 工事歩掛要覧について

公共建築工事積算基準とは

建築工事における工事費を算出するためのルールをまとめた基準書のことです。この基準は、特に公共事業において必要な工事費を見積もる際に使われます。国土交通省より発行され通常3年ごとに見直しが行われています。

工事歩掛要覧 (こうじ ぶがかり ようらん)とは

建設工事において必要となる人件費や資材費、機械費などを算出する際に基準となるデータをまとめた資料のこと。こちらも国土交通省より発行され、毎年改訂されます。

 

今回の改訂について

公共建築工事積算基準の改訂に関する情報

令和6年(2024年) 3月12日、官庁営繕関係基準類等の統一化に関する関係省庁連絡会議において、「公共建築工事共通費積算基準」の改定が決定されました。

また、令和6年(2024年) 6月12日には、「公共建築工事積算基準」や「公共建築工事標準単価積算基準」などの関連資料が改定されています。

これらの改定により、建築工事の積算における基準や単価が最新の状況に合わせて見直されました。

 

工事歩掛要覧 (こうじ ぶがかりようらん)の改訂内容まとめ

1. 新規工種の制定

現場の実態や新たな施工方法の導入に伴い、以下の工種が新たに標準歩掛として制定されました。

  • 排水材設置工(構造物背面排水):構造物の背面における排水材の設置作業に関する歩掛が新たに設定されました。
  • 仮締切工(砂防コンクリート締切):砂防工事における仮締切工法に関する歩掛が追加されました。
  • 舗装版削孔工(アスファルト舗装版):アスファルト舗装版における削孔作業の歩掛が新規に制定されました。

 

2. 既存工種の改定

使用機械や労務費の変動、施工方法の進化などを反映し、以下の工種の歩掛が見直されました。

  • 薬液注入工:薬液を用いた地盤改良工事における歩掛が改定されました。
  • 鋼管・既製コンクリート杭打工(中掘工):中掘工法による杭打ち作業の歩掛が更新されました。
  • かごマット工(多段積型):多段積型のかごマット設置作業に関する歩掛が見直されました。
  • 集排水ボーリング孔洗浄工:集排水ボーリング孔の洗浄作業の歩掛が改定されました。
  • トンネル照明器具清掃工:トンネル内の照明器具の清掃作業に関する歩掛が更新されました。

 

3. 移動時間を考慮した新規制定

作業員や機械の移動時間を考慮した新たな歩掛が制定されました。

  • 泥水運搬工:泥水の運搬作業における移動時間を含めた歩掛が新規に設定されました。

 

 

今回の改訂、変更点について筆者が個人的に気になったポイント

通費の算定方法

包含発注の場合、共通仮設費と現場管理費は工事種別ごとに区分して計上するように記載されています。
※包含発注とは:複数の工事種別(建築工事、電気設備工事、機械設備工事など)を一つの契約としてまとめて発注する方法のこと。

一般管理費は、建築・電気・機械の合計した工事原価に対しての一般管理費率により算定します。
以前からあった基準ですが、今回その点が改めて再確認され、より明確に提示されているようです。

 

歩掛りに計上するその他率 について

改訂版の「公共建築工事標準単価積算基準」によれば、「その他」の率は中間値+1%を標準とするとなっており、地域の特殊性等を考慮のうえ適切に定めると記載されています。
その他率については、中間値+1%を基準とする地域の特殊性への対応が重要視されました。

少量・僅少工事の単価補正

同じく国土交通省から発行された「『営繕積算方式』活用マニュアル」では少量・僅少工事における単価補正の方法についても詳細に触れられています。
ここでは、たとえば改修工事の場合の「執務並行改修」(違う階などでも建物内に執務者がいる状態で行う改修)の場合は、複合単価及び市場単価の単価補正をおこなう必要があると触れられています。
また、単価の割り増し計算例、割り増し係数なども示しており、適正な算出が強調されました。
プロジェクトの概算の時点から、どの程度の割増が出てくるかまで想定しておく必要があります。

【参考】『営繕積算方式』活用マニュアル(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/gobuild/content/001733291.pdf


まとめ

積算関係では今後新たな補正が出てくる可能性があるので、常に注視していく必要があります。
以上にまとめた改訂内容を考慮の上、引き続き業務に取り組んで参ります。