今回は、先日この記事の筆者が訪れた三重県のナガシマスパーランドにある人気アトラクション「白鯨」についてです。
大人気のジェットコースターについて構造的観点からの調査や実際に乗車した感想などをまとめていきます。

再利用されたホワイトサイクロンの木材

ナガシマスパーランドは三重県に所在する国内最大級の遊園地です。その中でも特に人気の高いジェットコースター「白鯨」は、1994年から2018年まで運営されていた木製コースター「ホワイトサイクロン」の後継として誕生しました。

ホワイトサイクロンの老朽化に伴い、新たなコースターとして再生されましたが、その構造材には大規模な再利用が行われました。

ホワイトサイクロンで使用されていたアメリカ松は、約4,000立方メートルにも及びます。この量は、4LDKの家を約800棟分建設できる計算になります。廃材を無駄にせず、新たな形で活かすというサステナブルな設計は、環境負荷の低減にも寄与しています。

革新的な構造設計


画像:ナガシマスパーランド公式ホームページ(https://www.nagashima-onsen.co.jp/spaland/info/deep_hakugei.html)より

木とスチールの融合、スケールの大きさが特徴

白鯨は、日本初の木製フレームとスチール製レールを組み合わせたハイブリッドコースターです。従来の木製コースターでは実現が難しかった、急傾斜やねじれのあるレイアウトを可能にしています。また、白鯨の具体的な特徴として、最大傾斜角80度、最高速度107km/h、全長1,530mというスケールを誇る点が挙げられます。これはRocky Mountain Construction社製造のハイブリッドコースターの中でも世界で2番目の長さを持ち、国内最大級の規模です。


画像:ナガシマスパーランド公式ホームページ(https://www.nagashima-onsen.co.jp/spaland/info/deep_hakugei.html)より

乗車してみての感想

この記事の筆者は、以前のホワイトサイクロン、新しく登場した白鯨ともに乗車したことがあります。ホワイトサイクロンは乗車中に木のきしむ音や揺れて独特の恐怖感がありましたが、白鯨ではそれがなくなった代わりにコースがうねる、宙返りするなどのスリルが味わえるようになったと感じました。

圧倒的なスリルを生む構築的要素

  • 最高部高さ:55.0m — Rocky Mountain Construction社製造のハイブリッドコースターの中で世界の3番目の高さを誇る
  • 最大加速度:4.0G — 乗車中に体験する重力加速度は戦闘機の旋回時に匹敵
  • 360度コークスクリュー — ねじれながら360度回転するセクションが設計されている
  • ゼロGロール — 一瞬の無重力状態を体験できる設計
  • 90度バンク — コースの一部では車両が完全に横倒しになる構造

画像:ナガシマスパーランド公式ホームページ(https://www.nagashima-onsen.co.jp/spaland/info/deep_hakugei.html)より

世界基準のコースター設計

白鯨の設計は、アメリカのRocky Mountain Construction社(RMC)とS&Sワールドワイド社、そして日本の三精テクノロジーズ株式会社によって共同開発されました。

RMC社は世界的に有名なハイブリッドコースター設計企業であり、白鯨はアジア初のRMC製ハイブリッドコースターとしても注目されています。

白鯨は世界でもトップクラスのハイブリッドコースターと比較され、以下のような順位に位置付けられています。
※以下の世界ランキングはRocky Mountain Construction社製造のジェットコースター内でのランキング

コースの長さ(世界ランキング)

  1. Steel Vengeance(Cedar Point, USA)— 1,750m
  2. 白鯨(Nagashima Spaland, Japan)— 1,530m

コースターの高さ(世界ランキング)

  1. Steel Vengeance(Cedar Point, USA)— 62.48m
  2. Wildfire(Kolmården, Sweden)— 56m
  3. 白鯨(Nagashima Spaland, Japan)— 55m

 

構築美としての白鯨


画像:ナガシマスパーランド公式ホームページ(https://www.nagashima-onsen.co.jp/spaland/info/deep_hakugei.html)より

白鯨は、単なるアトラクションではなく、美しい構築物としての一面も持っています。白く塗装された骨組みは、規則正しく組まれた幾何学的なパターンを作り出し、ライトアップされるとまるで巨大なアート作品のように見えます。

そのため、「ジェットコースターは乗れないが、見るだけでも美しい」という意見も多く、観覧車からの夜景は特に圧巻です。

まとめ

白鯨は、ホワイトサイクロンの名残を残しつつ、最先端の構築技術を駆使したハイブリッドコースターとして生まれ変わりました。そのスリルと美しさは、日本国内のみならず、世界中の絶叫マシンファンを魅了しています。