今回は、建築現場でコンクリートにストレスをかける工法として使用される
「アンボンドPC工法」
についてご紹介します。
これはアンボンド工法とPC工法を組み合わせたもので、建築物の床スラブ部分などに使われます。
【用語の説明】
アンボンド工法とは、建築材料を互いに接着させず、重ね合わせることで構造体を作る工法のことを指します。
一方PC工法は、PC鋼材を緊張し、圧縮力を加えたコンクリートを用いた工法のことを指します。
※PCはプレストレスト(Prestressed)コンクリート(Concrete)の略称
(日本語で解釈すれば「緊張材によりあらかじめ圧縮応力をあたえられたコンクリート」という意味になります。 )
橋梁や高速道路をはじめとした高い安全性が求められる公共構造物で使われています。
実際の建築の現場では、これらの異なる工法が組み合わせて使われることがあり、
組み合わせることにより建築物全体の性能を向上させることができます。
【コンクリートの特性とRC (鉄筋コンクリー ト)】
今回ご紹介する工法で用いられている素材のコンクリートには、
「圧縮する力には強いが、引っ張る力には弱い」という特性があります。
上記の弱点を、鉄筋で補った構造が、
RC造 (鉄筋コンクリー ト造)です。
※RCはReinforced Concreteの略です
鉄筋を入れて補強するので、大きな引っ張る力が加わっても壊れることはありません。
しかしRC鉄筋コンクリー トにも弱点があります。
それは、下の引っ張り部分に関して多少のひび割れは避けられないという点です。
【RC鉄筋コンクリー トの弱点を補うPC工法】
そこで考えられたのが、PC工法です。
※PCはPrestressed Concreteの略です
内部に入れた緊張材によって、あらかじめ圧縮力をコンクリートに加えることにより、
ひび割れを少なくすることが可能になりました。
【アンボンド・PC工法 施工の様子】
施工は鉄筋の配筋前に行います。
コンクリートが硬化した後に、端部のPC鋼線を専用ジャッキにより緊張します。
引っ張ることによりコンクリート内に反力として圧縮力が働きます。
上の写真にも写っている緊張材(鋼より線)については、
例えば最近の一般的なマンションでは、
緊張材には、PC鋼材を7本束ねたPC鋼より線 (15.2.㎜)などが使用されています。
これは鉄筋に比べて、5〜6倍の引張強度があると言われています。
アンボンド工法の特徴は、あらかじめ工場で製作された部材を現場で組み立てることにあります。
こちらのポリエチレン製のシース(ダクト、以下の写真の黒い部分)も、工場でPC鋼より線に被覆されています。
現場でPC鋼材を挿入する必要がなく、グリースがあらかじめ塗布されています。
従来のボンド工法であったようなシース内をグラウト注入する作業の必要はありません。 (以下の図を参照)
工程は従来のボンド工法に比べて少なく、大幅な工期短縮につながるメリットがあります。
また工期短縮のみならず、たわみやひび割れが少ないため小梁のいらない空間を作ることが可能というメリットもあります。
ちなみに実際の現場では、配線を配置する高さによって色分けしたりもします。
以下の写真では、オレンジや緑などの色で色分けされていることが確認できます。
それでは、本日はここまでです。
以上、アンボンドPC工法についてのご紹介と実際の現場での様子でした。