今回は、2024年上半期の段階で問題になっているケーブル不足についてと、従来のケーブルの代替品となるアルミケーブルについて整理していきたいと思います。

 

ケーブルが足りない?!社会現象について

2023年11月頃から2024年の3月頃まで、電気工事に使用するケーブルが足りないという社会現象が起きました。この時期にはケーブルの調達が出来ず、電気工事業者にとっては深刻な問題でした。

筆者の私も実際の現場で、ケーブル不足の問題を見て来ました。設計で見ていた「エコケーブル」も同じく調達が難しく、工事に影響を及ぼす厳しい時期でした。

 

エコケーブルとは

ここで、先に話題にあがったエコケーブルについて説明します。
エコケーブルとは、従来のケーブルと比べ環境に配慮がされているケーブルです。導体を覆う被覆が、一般ケーブルとは異なるため、不要になった際の焼却や埋め立ての段階で、人体に有害な物質を排出しません。またリサイクルがしやすい素材でできています。

コストは、一般ケーブルより一割弱高いです。

 

エコケーブル使用のメリット

  • PVC電線や一般のケーブルに比べ耐熱性、耐薬品性などが高い
  • 焼却の際にハロゲン系の有害ガスやダイオキシン等が発生せず、煙の発生量も大幅に抑えることが出来る
  •  使用済みケーブルの環境にやさしい処理が可能
  • 火災の際に人の命を守る

 

エコケーブルの不足の原因を考察

エコケーブルは主に公共工事で使用し、民間工事ではほぼ使用されません。エコケーブルの生産量は、一般ケーブルよりもかなり少ないため、一般ケーブルより早い段階で不足に陥ったと考えられます。

 

ケーブル不足問題の原因と課題

話は戻りますが、そもそもケーブル不足となった原因は、コロナ禍で遅れていた工事着工が同じ時期に一斉に動き出し、需要が急増したことにあると言われています。

工事に関わる電気業者からの発注が短い時期で急増し、生産が追いつかないという状況でした。2024年5月現在では、低圧ケーブルは通常通り受注開始していますが、高圧ケーブルは、納品まで数ヶ月かかる状況です。
よって、キュービクルを備えた高圧受電を計画している建物では、早めの発注が必要です。

 

銅の需要は高まる一方

ケーブルの原料となる銅ですが、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、最近ではリサイクルしやすい金属として業界全体から注目が高まっています。
また銅への需要が高まっているため年々価格が高騰し、2024年4月時点では1kg当たり約1450円前後で流通しています


※こういったウェブサイトでも価格の推移を確認できます
世界の経済・統計 情報サイト
https://ecodb.net/commodity/copper.html

 

銅が必要とされるシーン

ケーブル以外で銅が使われているシーンを考えてみましょう。
例えば、省エネとして売り出している空調機(エアコン)には、家庭用のものには4kg程度の銅が使われています。

また電気自動車のモーターには、銅線を巻いたコイルが使われています。モーターの銅の重量は約80kg-90kgと言われています。また急速充電器にも約8kgの銅が使用されています。
従来のガソリン車やディーゼル車ははエンジンで走行していたため、銅の必要性はありませんでした。一方で電気自動車にはガソリン車に比べ約4倍もの銅が必要です。電気自動車の普及が進むことで、益々銅が必要になってくることがお分かりいただけると思います。

さらに太陽光発電設備や風力発電など、再生可能エネルギー発電設備の部品や電線にも銅が使用されています。

今後これらの分野が引き続き推進されていくことで、銅の需要も加速する一方であると見込まれます。

今後の銅不足は予測済み?!代替品としてのアルミケーブル

昨年、ケーブル不足というニュースが流れた時、2024年(令和4年)の公共工事標準仕様書改定の時に、「アルミケーブル」という規格が始めて記載されたのを思い出しました。

国単位でも市場での銅が不足することは予測済みで、そのために新たな基準を設けたのだろうと納得できました。

なおアルミ二ウムは、金属の中でも価格が安定し、銅と比較して、価格は3分の1程度で安価です。金属製密度が低い割に、丈夫であるという特徴を備えています。

 

アルミニウム使用のデメリットはあるのか?

アルミ二ウムを使用すると当然ながら、メリットばかりだけではなくデメリットもあります。
以下ではデメリットと一緒に、アルミケーブルを採用する上での留意点をいくつか紹介します。

 

配管のサイズや建築的構造を再検討しなければならない

アルミ二ウムの伝導率は、銅と比較して約60%と低いです。そのためケーブルサイズは、今までの約一つ上のサイズが必要となります。あわせて配管は大きくなり、ケーブルラックも数が増え、従来と比較してスペースが広く必要となります。建物の壁や床の貫通孔が大きくなることになるため、建築の構造に大きく影響を与え、十分な収まりを検討する必要があります。

また、ケーブルが一回り大きくなることによって、ブレーカーに直接接続できないので、アルミケーブルを受ける端子台を設けなければなりません。端子スペースが増えるので、分電盤が多少大きくなります。

アルミ線になると、全て一つ規格が大きくなります。

 

消防法上でも注意が必要

アルミ二ウムは、融点が660度と銅の1083度より低いという特性があります。
消防法上ではいくつかのポイントに、750-840度の高温に一定時間耐えられる耐火ケーブルの使用が要求されていますが、アルミ線はこの用途では使用できないことになります。

 

おわりに

以上、事前にアルミケーブルについての情報整理でした。
アルミ導体の強みと弱みをさらに理解し、今後の市場変化を観察していきたいと思います。